「長友と吉田は先発で奮闘するも、リーグ戦で使われない理由も垣間見えた」UEFAヨーロッパリーグ グループK インテル-サウサンプトン

ここまでヨーロッパリーグは2戦2敗、公式戦も3連敗中とフランク・デ・ブール監督の解任もささやかれているインテルは、リーグ戦もヨーロッパリーグもまずまず順調に進んでいるサウサンプトンをホームに迎えての対戦。

フォーメーション的にはどちらも4-3-3だが、サウサンプトンは序盤から組織の完成度を見せつけて試合のペースを握る。とにかくサウサンプトンの強みは、DFのファン・ダイク、マティッチ、アンカーのロメウなど、守備的な選手がどんどん正確なフィードを繰り出し、サイドを中心に基点を作り出せる能力がある事に尽きる。吉田も頑張って出しているんだけど、彼らの精度に比べるとやはり一段落ちる印象。

逆にインテルは、まず1トップのイカルディはほぼ前に張っているだけだし、右ウイングのカンドレーヴァもサイドで止まっている事が多くて長友の上がるスペースを潰していた状態でDFからのボールを受ける動きが無く、かろうじてサントンとエデルが左サイドからボールを運ぶぐらいが関の山という状態。

守備でも、攻撃から4-3のコンパクトなゾーンを素早くセットするサウサンプトンに比べると、インテルは中盤の3人が戻るスピードが遅く、広大なスペースの中で始終マンマークに走っているので簡単にバイタルエリアでフリーな選手を作るなどバラバラ感が強い。監督はオランダサッカーを志向しているのかもしれないが、インテルのやりたいサッカーをサウサンプトンがやっているような状況だった。

しかしサウサンプトンは前半にあれだけ良い形でチャンスを作っていながらも、ロドリゲスら前線の選手が少なくとも3回はあった決定的なチャンスに決められず、無得点で折り返してしまった事が結果的に響いてしまった。サウサンプトンはリーグ戦からメンバーを多く代えての試合だったが、サブ組の決定力不足に泣かされたと言える。

サウサンプトンは後半15分までにも4本のシュートを放つ猛攻を見せるが、そこからパタリと勢いが止まってしまい、22分に右サイドのサントンにマークを付けていながらグラウンダーのクロスを打たれてしまい、ファン・ダイクが中に入ったカンドレーヴァを一瞬見失って反応が遅れ、インテルにワンチャンスから先制点を決められてしまう。

終盤にはサウサンプトンがセットプレイから何度も決定的なシュートを浴びせるものの、長友がポスト横でクリアしたり、ハンダノビッチのナイスセーブで得点は決まらず、結局インテルが1-0で逃げ切り、今期ヨーロッパリーグでの初勝利を飾った。

長友は久しぶりに先発して終盤まで起用されたが、守備ではゴールマウス内で2度もシュートをクリアするなど奮闘は見せたが、攻撃では最初から高い位置を取るためにマークを受けた状態になって、味方とリズムが合わずになかなかボールがもらえず、ウイングのカンドレーヴァとスペースがかぶるシーンも多く、左サイドのサントンに比べると、ビルドアップと動きを合わせてタイミングを見て上がる、という連動性に欠けるなと思った。

しかしそれだけゾーン・ディフェンスに馴染んでない長友でさえ、酒井高徳や酒井宏樹に比べると縦パスのスピード、正確性は明らかに上で、いかにザックジャパン時代の内田と長友がポゼッションサッカーの力になれていたかを痛感する。それを考慮せずにハリルホジッチのサッカーを批判する輩が多すぎる。

吉田については、試合開始直後に味方からの横パスをスルーしてPA内で相手に取られそうになった危ない場面以外は、高さでもカバーリングでも落ち着いて対処が出来ていた。失点場面も吉田はしっかりインに入った選手に付いていたので彼個人の責任ではない。ただサウサンプトンの目指すサッカーからすると、フィードや縦パスの精度、回数は物足りない。代表でもそこが同じ課題なので、さらなる向上を期待したい。