「今シーズンのバイエルンがもたついているのには、戦術的な理由も大きい」ドイツ・ブンデスリーガ第7節 フランクフルト-バイエルン・ミュンヘン

今シーズンは一応無敗で首位に立ってはいるものの、2位とは勝ち点2の差で独走するには至っていないバイエルン。第7節はフランクフルトとのアウェイ戦でも相手に退場者が出ながら勝ちきれず、これで2戦連続のドローに終わってしまった。

フランクフルトは、ヘクターを右CBにした5-4-1という奇策を用いてきたのだが、これがバイエルン対策としては効果的だった。攻撃時にはサイドを高く上げて攻めるバイエルンに対し、5バックでスペースと中央を埋めてきっちり弾き返し、攻撃に移るとバイエルンの4バックの外側からWBがオーバーラップで攻め、1トップのマイヤーをターゲットにクロスを上げる攻撃でゴールを脅かす。

バイエルンは4-3-3のフォーメーションなのだが、それほどコンパクトじゃなくて比較的間延びした形になっているので、守備時には中盤やウイングがDFラインまで戻って来れず、DFラインは常時4人のままで守らないといけない状態だった。前半43分にフランクフルトが追いついた場面では、4バックの外側にフランクフルトの選手がいたため、SBがそちらにボールが行った場合の意識を持っていたために中へ絞りきれず、スルーパスをカットしきれずフスティの前にボールがこぼれた事で生まれたもので、フランクフルトの5バックプランが当たったゴールだったと言える。

そして後半も、開始直後から猛攻を仕掛けながらも決定力不足で得点できず、ようやくキミッヒのゴールが決まってリード、フランクフルトのフスティが退場したのに、長谷部の縦パスから最後はオフサイド気味ながらもファビアンがシュート性のクロスを胸で押し込んで同点、結局2-2のドローという、何とも王者らしくない詰めの甘い試合を見せてしまった。

ペップが率いていた頃のバイエルンは、相手の攻撃に合わせて4バックや3バック、時には2バックまでも試合中に切り替え、後ろはノイアーに任せて前からのプレスで相手を窒息させ、守備の準備をさせないうちに力づくでゴールを奪うスタイルだったのだが、アンチェロッティになってからは、この試合でも前の試合から5人を入れ替えたようにターンオーバーの影響もあるのか、フォーメーションはずっと4-3-3のままで戦術的な締め付けが少ない、「緩い」サッカーになっているように見える。

まあアンチェロッティはレアルの頃もそういうスタイルで、選手のエゴや不満を上手くコントロールしながら長期的にはしっかり結果をものにする戦略を取っていたので、今の時点でアタフタする必要は無いのかもしれないが、それがかえってペップの凄みというか監督としての変態ぶりを露わにしているような気がする。

長谷部については、フスティが退場した直後の後半22分から登場。日本代表でも見たことがない鋭い縦パスから同点ゴールを生み出すなど、要所で試合を引き締めて存在感を見せていた。先発からは度々外れるようになったが、まあ心配する必要は無さそうだ。