「不遇に沈むジョー・ハートがイングランドの危機を救う」ロシアW杯欧州予選 グループ6 スロベニア-イングランド

9月末にアラーダイス監督が突然のスキャンダルで辞任という激震があったものの、ここまでロシアW杯予選のグループステージを2戦2勝と順調なスタートを切ったイングランド。しかし突然が、1勝1敗で上位に付けているスロベニアのホームに乗り込んでの試合。

イングランドは4-3-3で、前線はスタリッジの1トップにウォルコット、リンガードのウイングを配してインサイドハーフはアリとダイアー、アンカーがヘンダーソンという並びでルーニーはベンチスタート。対するスロベニアは表記上は中盤ダイアモンドの4-4-2だが、実質的にはベズヤクが1トップの4-1-4-1。

試合は序盤からホームのスロベニアが攻勢に出る。4-1-4-1の2列目4人がイングランドのDFと中盤に対して激しくプッシュを仕掛け、ビルドアップを封じ込めにかかる。対するイングランドは、スロベニアの前5人が攻めに出てDFラインとの間に出来たスペースをウイングの2人が使う事で対抗するのだが、そこでボールを持っても守備陣の寄せとマークが素早くて決定的なチャンスを作れない。

イングランドは前半9分に、左サイドでの不用意なバックパスを拾われてGKと1対1になる大ピンチを迎えるが、シティを追われてトリノへ失意の移籍をしてしまったジョー・ハートが体で防いでイングランドは命拾い。これでイングランドはリズムが狂ったのか、そこからはスピードのある攻めができずにアバウトなクロスを上げるかセットプレイぐらいしか見どころが作り出せず、枠内シュートゼロで前半を終了する。

後半も開始早々にスロベニアがビッグチャンス。CKからスクビッチにど真ん中で合わされたヘディングを弾き返すと、その直後のCKでニアに合わされたボールも、ハートの手に触れたボールがポストとバーに当たり、またハートに向かったボールも弾き出すという、一瞬で2度のセービングという奇跡のプレイで失点を防ぐ。ハートは後半24分にもヘンダーソンからのノールックバックパスというとんでもプレイからの1対1も防ぐなど、たとえ負けたとしても間違いなくこの試合のMVPに押せる大活躍だった。

一向にパフォーマンスが上がらないイングランドは、後半28分にルーニーをトップ下に投入して打開を図り、スロベニアもさすがに運動量が落ちてDFラインの寄せが甘くなり、イングランドがバイタルエリアでボールを持てる回数は増えたのだが、いまいち攻撃のアイデアに欠けてミドルシュートが多くなり、リンガードの鋭い無回転シュートもスロベニアGKオブラクにきっちり止められ得点ならず。そのうちイングランドの勢いも落ち始めて、どちらもドローで良しとの空気が流れる中で試合終了。

イングランドは相変わらずサイドでの個人技頼みで、中とのコンビネーションで崩す形、アイデアが見られないのは監督が変わっても一緒だなあと。予選は問題なく突破するだろうけど、本大会では今のところ期待できそうな材料がない。スロベニアは終始攻め込みながらもやはり決定力が問題。しかし4-1-4-1のゾーン・ディフェンスでありながら、イングランドが相手であってもインテンシティの高い、攻守の切り替えが早い攻撃は、組織というと守備に偏ってしまう日本が見習うべきポイントだ。