受け入れがたい?ハリルホジッチ監督の「言行不一致」

昨日は、UAE戦の敗戦を受けて何か前向きになれる文章を書こうかと思っていたのですが、想像以上に敗戦のショックが大きくてブログをアップする気力が湧きませんでした。

W杯最終予選で勝って当たり前、実際に同じ日に行われた他のカードでは全てホームチームが勝っていたわけで、そこで日本だけ試合を落としてしまった事実もあるでしょうが、何よりもショックだったのはハリルホジッチ監督になってこれだけの年月が経過しても、まだブラジルW杯のような「自分たちのサッカー」をやってしまった。つまりあの惨敗から日本は何も進歩してないという厳然たる事実を見せつけられた、それに深く失望してしまったというわけです。

ハリルホジッチにしてみたら、日本は二次予選を突破してキリンカップでもゾーン・ディフェンスベースのサッカーへとモデルチェンジして来た。これで最終予選の準備は整ったと思っていたはずです。しかし蓋を開けてみればシンガポール戦の日本まで一気に後退してしまった。何故だと愕然としたことは想像に難くありません。

しかしそれは選手だけの問題じゃなくてハリルホジッチの選択、判断にも問題はありました。

まず1つは、選手のゾーンに対する判断能力を甘く見ていた事。UAE戦では、日本が先制点を取った時間帯までは、それなりにポジションバランスが取れたサッカーをやってました。しかしその後はイケイケスイッチが入ってしまったのか、真ん中に人が集まってワンツーをやる自分たちサッカーが始まり、ボランチもSBも上がってバイタルスカスカ、そこを突かれて失点に繋がるファールを犯してしまいました。

海外組は、一応ゾーン・ディフェンスベースの戦術を採用しているチームに所属している選手が多いのですが、きちんとゾーンを意識してプレイしている選手は岡崎と原口、長谷部ぐらいで、酒井高徳はまだ怪しいし、酒井宏樹に至ってはマルセイユで逆に戦術意識が後退しつつあり、本田と香川は基本的に何かで縛られるのを嫌うタイプです。キリンカップでまとまったと思っても、最終予選ではご破算から再構築を強いられた上に頭のネジが吹っ飛んだわけで、それを予期した第二の手段は用意していませんでした。

2つ目は人選の問題。戦術を重視するのであれば、オシムのように才能よりもチームのために働ける選手を優先するのが普通なのですが、ハリルホジッチは戦術だデュエルだと言いながらもタレントやポテンシャルを持った選手が好きなようで、ゾーンじゃなくて人に食いつく守備が好きな山口をボランチに呼ぶし、宇佐美や大島といったデュエルについては平均以下の選手を好んで起用しています。タレントは鍛えられないがスキルや戦術は鍛えられると信じているのかもしれませんが、「走らない選手は本当に走らないのだよ、これが(笑)byオシム」ですし、最終予選のぶっつけでやれと言われるほうが気の毒です。

そして3つ目は戦術の問題。ハリルホジッチは就任からずっと好んで4-2-3-1を使用していますが、現在ではこのフォーメーションはゾーン・ディフェンス+ショートカウンター志向のサッカー向きであり、遅攻だとトップ下の選手が消えがちになるので、バルサやレアルのようなポゼッション志向のチームはビルドアップが容易な4-3-3を採用する事が多くなっています。

しかもハリルホジッチは2列目で香川と本田を横並びで使ってますが、彼らは同時に真ん中でプレイしたがるし、互いに互いを見てしまうので、必ずショートパスによる遅攻、自分たちのサッカーに嵌ってしまいます。その事はブラジルW杯を見ればすぐ分かるはずです。UAEがアジアカップで引き分けた時より強くなっているという見方をする人が多いですが、あの時はアギーレは4-3-3を採用しており、もっとボール回しがスムーズでした。

日本は4-3-3にする事で、左インサイドハーフの香川とウイングの本田は横並びにならず距離も適切に離れますし、トップ下のスペースは最初から空いているので渋滞が避けられます。本田と香川は、もともと遠くを見て正確にボールを運べる能力があるのですが、互いの引力が強すぎるので隣に置いちゃいかんのですよ。さらに遠藤や柏木の代役問題も回避出来るという一石三鳥なのに、何故かハリルホジッチは頑なに4-2-3-1にこだわります。

相手が引いて来るのを分かっているのに、フォーメーションと戦術はショートカウンター、でも人選と配置はポゼッションと、明らかに矛盾が起こってます。ハリルホジッチの言ってる事と、やろうとしている事には賛同できますが、それと実際にピッチ上で起こっている事が明らかに食い違っている。もしかすると戦術の引き出しが4-2-3-1しか無いのではないか。などと、どうしても拭い切れない不安を感じます。

個人的には決してハリルホジッチは無能だとは思いませんし、ジーコと同じレベルで不信任とみなしたりはしませんが、もしタイ戦でも理想と現実との間に折り合いが見いだせず、結果が出せないようであれば更迭もやむなしかなと思っています。後任は手倉森さんでいいんじゃないですかね。低めに守ってカウンターサッカーに徹すれば(笑)。まあそうなってしまわない事を願うだけですがね。