石井監督を、あくまで「プロ監督」という扱いにはしない鹿島の理屈

先の8/20に行われた湘南戦で、鹿島の金崎が途中交代させられた時に、石井監督に対して暴言を吐いたとされる件を問題にし、ハリルホジッチが代表から一時追放とした事で一気に炎上したこの話題。

その後、金崎が謝罪したという事でクラブからはお咎め無し、次の試合に先発復帰したのに対し、石井監督は心労のためダウンして試合を欠場、その後はある程度回復したとして復帰への意欲を見せるものの、鹿島の鈴木常務・強化部長は体調不良とはいえ現場を離れた責任から「(復帰しても)何もなかったということにはできない」と監督に対してのみ処分をほのめかした事で、さらに再炎上する事態になっています。

常識であれば、サッカークラブの監督とはピッチ上で全権を掌握する立場であり、その監督に対する暴言は欧州などでは相当な重罪とされ、数試合のベンチ外、下手をすると放出という処分に至る事は珍しくありません。だからこそハリルホジッチにとっては金崎の行動は到底看過できなかったわけです。

Jリーグの中では比較的しっかりしたフロントであるはずの鹿島が、何で傍から見たら悪手のような対応を、それもアタフタという感じではなくて半ば確信的にやってしまうのか理解出来なかったのですが、ふと視点を変えてみるとなんとなく腑に落ちるような理由が見つかりました。

それは、鹿島というクラブにとっては「石井正忠」という存在は、あくまでクラブの身内、従業員のようなもので、決してジーコやトニーニョ・セレーゾのようなプロ監督としては見られていなかったと言うことです。

石井監督は住友金属工業から鹿島アントラーズに変わった時の選手で、指導者としてもずっと鹿島で育ってきた生え抜きであり、やはり住金から鹿島一筋だった鈴木常務にとってはずっと部員、部下という存在だったわけです。そりゃ上下関係を重んじる日本人としては、いきなり監督になったからプロとして扱えといってもなかなか難しいでしょう。

だから、鹿島フロントにとってみれば今回の件は、「ウチの石井が世間を騒がし、ご迷惑をおかけしまして」と頭を後ろから押さえて下げさせているようなものなんですよね。石井監督自身にとってみても、金崎の態度が自分の職権を犯したという事よりも、不甲斐なくて申し訳ない、クラブに迷惑をかけたのだから処分は当然という思いがあるのではないかと思います。鹿島サポーターがクラブの対応を擁護しがちなのも、そういう身内意識を共有する部分があるからでしょう。

ハリルホジッチのリードもあって世間にとって今回の件は、プロとプロの間で守られるべきルールの問題という見方になってしまっていますが、鹿島にしてみたらあくまで身内、鹿島ファミリー内部の問題であり、プロどうこうという視点ははなから存在していない。そのミスマッチが、ここまで違和感を大きくしてしまっている理由ではないかと思います。