「ゾーン・ディフェンス最大の罠に陥ったポーランド」EURO2016 準々決勝 ポーランド-ポルトガル

先週末にPCのディスクがクラッシュしてしまい、いろいろと再セットアップしている最中なので短めに。

ここまでのユーロでたった1勝と、エースのクリスティアーノ・ロナウドが未だ眠ったままで深刻な得点力不足のまま何故か勝ち上がってきたポルトガルだっただけに、試合開始わずか2分でサイドチェンジをポルトガルの右SBセドリックが目測を誤ってボールがグロシツキに渡り、折り返しをポーランドのエース、レヴァンドフスキが鮮やかに決めた時には、この試合は誰もがポーランドのものだと思ったはずだ。

しかしポーランドは、そこから焦って前がかりになったポルトガルに対して何度もカウンターのチャンスを作るが決められず、あまりに早い時間に先制してしまったのもあってか、守備のゾーンがかなり低めだったのもあってカウンターの勢いが減り始め、徐々にポーランドが自陣に張り付いてポルトガルが攻めあぐねる展開になってしまう。

ここでポーランドが我慢して前半まで守り切れれば試合の結果は変わったのだろうが、だんだんポーランドは守り疲れてきたのか各自がゾーンのオリジナルポジションに戻るスピードが遅くなり、33分にセットプレイで左右にボールを動かされた後、レナト・サンチェスがPA左側でボールをキープ。この時にポーランドの4バックは右側に寄ってしまっており、CBと左SBの間に大きなスペースが出来ていた。

そこにポルトガルのナニが流れ、慌ててポーランドのCBとボランチがマークに行って動きがかぶってしまい、リターンをもらったレナト・サンチェスがフリーになってダイレクトで同点ゴールを決められてしまった。

前半の残りは両チームともハーフタイムを待つように低調な流れで推移、後半からポーランドはクァレスマを入れて4-2-3-1でサイド攻撃を強化するものの、肝心のクリロナがクロスを足に当てそこなったり、オフサイドラインぎりぎりの飛び出しからフリーになるがシュートを空振りするなどチャンスに決められず、ポーランドも押し込まれながらも数少ないチャンスにミリクがやっぱり決められず、延長戦も散発的にチャンスがあっただけで試合はPK戦に。

PK戦ではポルトガルが全員決めたのに対し、ポーランドは4人目ブワシュチコフスキのキックをポルトガルGKパトリシオがドンピシャのタイミングで片手セーブ、ポルトガルは何とグループリーグから通算して1勝4分けという結果でベスト4へと進出した。

ポーランドは戦術的には4-5-1のゾーン・ディフェンスで洗練、統一されていたが、ゾーン・ディフェンスにとって一番の大敵は、全員がフィジカル・スタミナ的に同じレベルでないと、途端にあちこちに穴が開いて取り返しがつかなくなるという点にある。ポーランドはここまでの激戦で明らかに疲れており、クリロナという常にマンマークでカバーしなければならない選手がいただけに、余計にゾーンのコントロールに苦心させられていたせいもあったのだろう。

逆にポルトガルは前線の5人がポジションを目まぐるしく入れ替える”自分たちのサッカー”ではあったが、後ろの選手は経験豊かな選手が揃っているだけに、序盤に何度かあったカウンターのピンチさえ凌げばそれほど苦しくはなかったように見えた。次は波に乗るウェールズとの準決勝、ベイルとクリロナのレアルダービーというカードだけに、どちらが爆発するかで勝負が決まりそうだ。