「実はハリルホジッチのチームと良く似ている高倉ジャパン」国際親善試合 日本-アメリカ

高倉新監督になってから初めての試合が、世界最強国アメリカとコロラドの高地での試合という事で惨敗も予想されたなでしこジャパンだったが、蓋を開けてみればロスタイムに横山のゴールで追いついての3-3ドローと、大健闘とも言える好調なスタートとなった。

高倉監督の採った布陣は、1トップに岩渕を置いて、2列目にこれまではセンターフォワードだった大儀見が左SHで、トップ下に千葉、右SHに中島を置いた4-2-3-1という意外な形にして来た。実は、このフォーメーションの狙いはハリルホジッチ・ジャパンとかなりの近似性がある。

男子代表の1トップは岡崎が指定席だが、彼はガッチリポストプレイをやるのではなく、前線で動きまわってボールを引き出し、日本が誇る2列目の選手に前を向いてボールを受けさせる役割がメインである。そして2列目は単なるサイドプレイヤーではなく、得点力があって中でプレイ出来る選手を並べている。

それは攻撃だけではなくて守備にとっても意味があり、2列目の選手がPAの幅の中でプレイする事で、横方向がコンパクトになってプレスが効きやすくなり、1対1でボールを奪えない日本選手にとっては守備の数的優位を作りやすくなると言うわけだ。ただ、ボールサイドに人が寄る分、逆サイドに大きなスペースを作ってしまうが、ハリルホジッチはそこにSHを降ろして5バック化させる事でカバーしていた。

佐々木監督時代は、日本のフォーメーションが4-4-2と中盤が薄い形だったのに加えて、守備組織があまりコンパクトではなく、澤という異常に危機管理能力が高い選手がボランチにいた時はある程度何とかなっていたが、引退後はスッカスカの中盤が常態になってしまっていた。高倉監督は4-2-3-1で中盤を厚くコンパクトにする姿勢は打ち出しているが、1失点目のようにボランチが簡単に交わされてしまうとコンパクトな分ピンチになりやすく、SB裏のスペースを何度も使われていたので、まだ組織としての完成度は高くない様子だ。

そしてこのタイプのサッカーは前線からのプレスが無くなると相当厳しくなるのがお決まりで、大儀見がつまらないスライディングでイエロー2枚目を食らって退場してからは、アメリカのボールの出しどころが抑えられなくなって防戦一方になってしまった。幸い、数えきれないぐらいにあったピンチを2失点で切り抜け、ロスタイムのゴールで同点には追いついたが、もうちょっと数的不利でも抵抗できるようにならないとこのままでは厳しい。

とまあ色々文句を書いてしまったけど、初戦で宮間抜きという事を考えると上々の内容と結果である事は確かだ。ボランチに入った阪口のゲームメイクは良かったし、トップ下でサプライズ先発を果たした千葉も、2部の選手とは思えない落ち着きを見せていた。そしてGKの山下は、ミスから2失点を喫したようにまだまだ経験不足だが、相手のチャンスにもノイアーのように最後まで余分な動きをせずしっかり待って見極められるのは凄いと思った。もしかすると将来大化けする選手かもしれない。

そして今朝行われた第2戦は大きくメンバーを変えて、後半30分に悪天候で試合中止になってそこまでは0-2という結果だったようだ。高倉監督のコンセプトははっきり見えたので、今はじっくり若手のメンバーを育てながら、コンセプトに適した選手を選んでもらいたいね。