「実は似たもの監督なラニエリとマンチーニ。彼らの明暗を分けたポイントは何か?」イタリア・セリエA第37節 インテル-エンポリ

イタリアのセリエAも残すところ後2試合。リーグ戦とチャンピオンズリーグ出場権争いは既に決着が決まってしまい、後は残留争いとヨーロッパリーグ出場権争いを残すだけとなった。

ジェノア戦とラツィオ戦に負けてチャンピオンズリーグ争いから脱落したインテルは、ホーム最終戦のエンポリ戦でも相手のミスからのカウンターで、12分と40分にイカルディ、ペリシッチがゴールを決めて2-1で折り返すものの、後半はエンポリの圧倒的な攻勢に対して終始アップアップ、後半のシュート数はエンポリが8本に対してインテルがわずか3本という情けない状態。

終盤は完全に足が止まってオーバーラップするのは長友のみ、ロスタイムのボールキープも上手く行かず、試合終了間際にセットプレイからマッカローネにフリーでヘディングを打たれてしまい、ハンダノビッチが反応できず見送ったボールはわずかに枠の外。インテルが命からがら逃げ切って何とかヨーロッパリーグのストレートインになる4位を確定させた。

同じイタリア人監督で、ともにインテルを率いた事があり、4-4-2のゾーン・ディフェンスからのカウンター戦術を得意とするなど、実はマンチーニとラニエリの間には意外と共通点が多い。しかも、マンチーニは選手時代に短い間とは言えレスターに在籍した事もあったりするのだ。

今シーズンのインテルは、レスターと同じように年末までは首位争いを繰り広げていたものの、後半戦はレスターと正反対に急激な失速を起こしてしまい、その後も成績を安定させる事が出来ず、ラニエリとは大きく道を違えてしまう結果になってしまった。

その大きなポイントは、比較的早い段階でチームを固められたラニエリに対し、マンチーニは最後の最後までなかなかベストのスカッドを決められなかったという点にあるだろう。パラシオの怪我やグアリンの移籍という中心選手の離脱があった事は同情の余地はあるが、欧州戦も無かったのに選手をターンオーバーし、戦術もコロコロ変えてしまったのは明らかにチームをいじり過ぎである。以前のラニエリが同じような事をやって「ティンカーマン」と揶揄された同じ過ちを起こしている。

そして、レスターはハードワークというチームコンセプトが徹底されていたが、マンチーニのチームではそれが極めて曖昧だ。最もハードワークが出来る長友は前半戦に戦力外とみなされ、ペリシッチやブロゾヴィッチといったサイドの選手は良く走る一方、イカルディ、ヨヴェティッチ、フェリペ・メロといったセンターラインの選手は運動量に乏しい。この試合でもトップ下のヨヴェティッチはほとんど守備に戻らず、エンポリにバイタルをいいように使われていた。これも、岡崎をトップ下に配するレスターと正反対である。

イングランドと比べて荒れたピッチが多いイタリアという環境、レスターほど雑草選手が多くない名前だけはビッグクラブのインテルという状況を考えると、同じメソッドを取って同じ結果になるとは思わないが、この試合を見ると長友も使い続ける事で数的不利な守備でもしっかり対応できるようになっているし、マンチーニとって今期のラニエリに学ぶ点は大いにあるように思う。

まあ、最近のマンチーニの発言を見てもスーパースターの獲得を希望しているようだし、まだ全然ビッククラブの監督気分は抜けてないようだからラニエリの境地になるのは望み薄だけどね(苦笑)。