「アフリカの弱点を正確に突ける、サンフレッチェの驚くべき冷静さ」クラブW杯 準々決勝 サンフレッチェ広島-TPマゼンベ

準々決勝の第1試合で、アジア王者の広州恒大が北中米カリブ王者のクラブ・アメリカに逆転勝ちした結果を受けての、サンフレッチェ広島とアフリカ王者TPマゼンベが対戦した第2試合。

試合の前半はマゼンベのペース。マゼンベはアフリカのチームらしく、選手個々のリーチが長くて1対1になると上手くボールを絡めとってキープし、トップスピードの速さで広島の選手を上回り、サイドの攻防で優位に立って試合を支配する。そしてシュートコースがあると躊躇なくシュートをバンバン打って来て、広島にとっては気の抜けない展開が続く。

しかし、19分にシュートは枠を外れたもののカウンターから佐藤が決定機を作ったあたりから広島がマゼンベのプレッシャーに慣れて来て、青山と森崎和幸のダブルボランチを中心に相手のプレスが掛かる前にパスを回せるようになって広島が徐々に盛り返すものの、この日はミキッチの調子がイマイチでなかなかサイドから有効な攻めが作れない。

と思ったら、そのミキッチのクロスから奪ったCKの場面で、茶島の蹴ったボールをニアに飛び込んだ佐々木が頭でそらし、フリーで飛び込んだ塩谷が押し込んで広島が先制して前半を終える。

後半になるとすっかり試合は広島ペース。マゼンベの守備は典型的な西アフリカのチームらしく、前線と2列目は激しくプレッシャーをかけて来るんだけど、そのファーストディフェンスさえ抜けてしまえばあとはスカスカ、4バックはゾーンのラインは作っているんだけどディアゴナーレが無い、つまりアタックはしてもスライドはして来ないので簡単にスペースが生まれてしまう。

何度か広島がチャンスを逃してやや嫌な空気になりかけたが、それを救ったのがまた茶島のセットプレイで、11分にキックを千葉の頭にきっちり合わせて広島が2点目を決める。これでもうほぼ試合の行方は決まったようなもので、そこからは広島が得意の5-4-1で守りを固め、23分にゴール前でこじ開けられたピンチも青山が体を張って防ぐ。

広島は30分にようやくリリーフエースの浅野を投入すると、その3分後にカウンターから青山が右サイドのミキッチに展開、フリーで上げたクロスを浅野がヘディングで叩き込んで完全なダメ押しとなる3点目。これでマゼンベは心が折れたのかそこから反撃の機会はほとんど作らせず広島が3-0で完勝。リバー・プレートとの準決勝へと無事駒を進めた。

それにしても、じっくりと相手の圧力に耐えつつ徐々にパスでリズムをつかみ、セットプレイで得点を重ねて行った広島は、わかっちゃいるけどACLでフィジカル勝負をされて守備が耐え切れず、あっさり失点を重ねてしまうパターンが多いJリーグのチームとは思えない試合巧者ぶりで驚くしか無い。

そして主力の相次ぐ怪我によって先発起用された茶島も、ドルトムントのヴァイグルを思わせる正確なボールタッチとシンプルなパスワークで柴崎の不在を感じさせなかった。1戦目のアクシデントでかなり心配したが、これなら疲労はあるにせよリバープレート戦でも恥ずかしくない試合が出来そうで楽しみである。