「ある意味、欧州で最も過激なチームに大迫のダメ押しゴールで勝利」ドイツ・ブンデスリーガ第1節 シュツットガルト-ケルン

昨シーズンならばシュツットガルトには酒井高徳が居て、ケルンには大迫と長澤が居てと日本人対決になるカードのはずだったが、酒井高徳はHSVに移籍し、大迫はベンチ、長澤はベンチ外と先発がゼロ人という寂しい対戦になってしまった。

ケルンの先発フォーメーションは4-1-4-1で、1トップには大迫ではなくて新加入のモデストが選ばれたわけだが、どんな監督にとってもシーズン序盤は新しい戦力や戦術を試したいという傾向があるもので、4-1-4-1の1トップなら足元よりも高さと強さがあるモデストを優先したのだろう。

従来は4-4-1-1や4-4-2を使う事が多かったケルンが4-1-4-1にしたのは、中盤の底にアンカーを置くフォーメーションが流行っている時節と無縁ではないだろう。その理由として、今期のドルトムントもそうだが、SBを高く上げてアンカーを下げて3バック気味にビルドアップを行うチームが増えている事が挙げられる。

今まで多くのチームが採用して来た4-2-3-1は、守備時には4-4-2に変化して2トップがファーストディフェンダーとしてプレスをかけに行く形が多いのだが、ブラジルW杯で日本がコートジボワールに対して効果的なプレスが出来なかったように、2トップだと3バックで回されるとマークが外れてしまう場合が多い。そのため、前線を奇数にして3バックにそれぞれマークを当て、中盤の3枚で高く上がったSBをカバーしようというチームが多くなっているわけだ。

ただしケルンのこのフォーメーションは機能しなかった。ドルトムントから加入したヨイッチがゲームを作れず、たまに偶発的にモデストがフリックで流したり、ビッテンコートの飛び出しにロングパスがあったりする以外にカウンターの形が作れない。と言うか、後半途中まではほぼ一方的なシュツットガルトペースで、点は後半75分になってから合計4点が入ったのだが、そこまでシュツットガルトが3点ぐらい取っていてもおかしくないだけの決定機があった。

シュツットガルトのフォーメーションは形の上では4-4-2だが、実際はほぼ2-4-2-2か下手をすると2-2-4-2と極端にサイドを高く上げ、アンカーの脇のスペースに入ったボランチやSBにボールを当て、徹底的に速いタイミングでDFラインの裏へとボールを送り、センターに寄ったFWやSHを飛び出させるという、ドルトムントのようにサイドでゲームを作る事すら放棄した極端なまでに縦へ速い、ハリルホジッチでさえ目をむくようなサッカーをやって来た。

そしてケルンが必死に体を張ってゴール前で攻撃を止めるのだが、そこにはボランチやSBが待ち構えていてゲーゲンプレッシングが襲いかかり、今度はサイドをえぐってクロスの波状攻撃という二段構え。これにケルンの守備は4-1-4のゾーンを整える暇も無くズタズタにされ、数えきれないぐらいの決定機を作られる羽目になってしまったが、GKホルンの奮闘もあってかろうじて失点を免れる。

ヨイッチは後半から1トップ下に移って4-4-1-1になったがそこでも基点になれず後半9分に大迫と交代すると、大迫はいきなりポストプレイから反転して展開するプレイで存在感を放つが、すぐにシュツットガルトは修正して大迫にボランチが付くようになって試合は膠着状態に。しかし後半30分のケルンPKを皮切りに、2分後にはショートカウンターからケルンが追加点を重ね、そのまた2分後に今度はシュツットガルトにPKと試合が激しく動く。

しかし後半ロスタイムに、競り合いからスルッと抜けだしたモデストが独走、GKとの1対1で並走してきた大迫にパス、大迫はダイレクトじゃなくて浮き気味のトラップをしてしまって相手に当てるか一瞬心配したのだが、浮き際を上手くかぶせてゴール。これがようやくこの激しい試合に対するダメ押しになった。

大迫は先のポカールで中盤として起用されて監督にFWとして出たいと直訴したという噂があるが、この試合では4-1-4-1の時は全く中盤が機能しなかったのを見ても、ボールを捌けてパスを出せる大迫を中盤で使いたいという監督の意図は理解できる。その大迫の葛藤とチーム状況が上手く噛み合えばいいのだが、しばらくはどちらにとっても試行錯誤は続くかもしれない。

それにしても、シュツットガルトのツォーニガー監督が取る2バック戦術は、現在欧州で最も過激と言って間違いないだろう。ケルンが終盤に3点を奪ったように、決める時に決められないと運動量が落ちた後半に崩壊する可能性が高いリスキーな戦術であることは確かなので、今後どういう試合結果になって行くのかがある意味楽しみである。