「ミランが今期13人も退場者を出しているのには理由がある」イタリア・セリエA第37節 ミラン-トリノ

ここまで11勝13分け12敗と、トータルで負け越しという惨めなシーズンを送ってきたミラン。ホームでの最終戦となるトリノ戦は空席の目立つ寂しい試合になってしまったが、ようやく怪我から復帰したエル・シャーラウィの2ゴールを含む3-0で快勝、ひとまず締めくくりだけは何とか体裁を整えた格好になった。

しかし前半のミランは1点を先制したとはいえ、今シーズンを象徴するようなバラバラな戦いぶりだった。

トリノは守備的な3-1-4-2のフォーメーションで、本田に対してはWBとCBで常にダブルチームのような形で激しくプレッシャーをかけて来て、ボールキープさえままならない本田は中に入ってマークから逃れようとするのだが、1トップに入ったパッツィーニも中央から動かないので中は完全に交通渋滞、そしていつものようにDFラインは相手FWの位置で固まっているので中盤が広く空き、本田が中で受けてもそれをフォローする選手がいないので、結局単純に後ろにボールを返すか無理にキープしてボールを取られるかの2択になってしまっていた。

本田自身の調子もパッとせず、ピッチの芝が深そうなせいもあるのかボールがしっかり足に付かずトラップが跳ねてそこを狙われていたし、判断が遅くて全体的にボールを持ち過ぎてラストパスやシュートが引っかかる事が多く、FKやCKの精度もいまいちで特に前半は攻撃面でのブレーキになっていたのは確かだろう。

そして前半の43分にまたもミランは決定機阻止でザッカルドが退場してしまうのだが、このシーンを見るとミランの選手全てが後ろ向きでトリノの攻撃に対処しているという事実にげんなりしてしまう。つまり、誰がマークに行って誰がカバーするのかという組織的な約束事がなく、選手各自の判断で場当たり的に対応してしまっているため、簡単にDFラインを破られて最後は個人で止めなければならなくなるわけだ。これではレッドカードが減らないのも当然である。

ただ、この試合に関してはミランが1人少なくなった事が結果としてプラスに働いた。前半はミランがボールを持たされて中盤がスカスカになったところでカウンターを食らっていたのだが、後半は逆にミランは4-4-1の形で自陣にコンパクトな2ラインを引かざるを得ず、逆にトリノ陣内に出来たスペースを利用しながら効果的なカウンターを繰り出せるようになり、本田もようやく時間と空間の自由を得て前向きにボールが持てるようになった。

正直、結果としては快勝ではあったが試合前にヨーロッパリーグへの自力出場の可能性が断たれていたトリノのモチベーション低下と、エル・シャーラウィの爆発のおかげであって、決してチームが意図していた形での勝利ではない棚ボタだったのは事実。とにかく選手組織両面での守備のテコ入れ、誰が出場するかによって全くやってるサッカーが変わってしまう現状を何とかしないと、結局誰を監督に据えてもミランは同じ失敗の繰り返しになってしまうだろう。