「短期決戦だからこそ戦術のベースが大事というブラジルでの教訓」高校選手権 準々決勝 履正社-星稜

準々決勝に進出したもう1つの関西勢である履正社高校は、石川県の星稜高校と対戦したものの0-1で敗戦し、京都橘高校と同じく今大会はベスト8での敗戦になってしまった。

3回戦で対戦した大分中津東との試合では、あえてポゼッションせず相手のDFラインの裏を狙う攻撃が当たって大勝した履正社は、この試合でも序盤は同じような戦術を行おうとしたものの、星稜はその狙いを読んでいたのか2列目がボールホルダーに高い位置からプレスをかけてパスの精度を奪い、DFラインは比較的低い位置に置いて裏への飛び出しを牽制しつつ、中盤からこぼれたイーブンボールを拾う守備で対応してきた。

こうなると主導権争いは互いの中盤が戦場になり、フィジカルとボールキープ力、ポジションバランスが取れている星稜のほうが上回り、履正社はなかなか攻撃が出来なくなる。が、前半の終わり頃になると突如履正社はスタイルを変更してショートパスをつなぐサッカーになり、星稜の2列目とDFラインの間に出来たスペースを使って波状攻撃を仕掛け、何度か決定的な場面を作ったものの、星稜GK近藤君のファインセーブに防がれて得点できず。これが履正社にとっての致命傷になってしまった。

後半最初からも履正社がペースを握ったのだが、こうやって押せ押せになるとかえって守備陣の集中力が切れてしまうもので、後半5分にカウンター気味な流れから左サイドで一瞬溜めを作り、その動きで履正社のCBがボールウォッチャーになったところを大田が割り込み、クロスのボールを先に触ってゴールネットを揺らす。

この得点で星稜に落ち着きが戻ったのに対し、履正社はパスワークが直線的になりすぎ、サイドを使うよりも中へ縦へと急ぐ攻撃ばかりになってしまって逆に星稜のほうがワイドなサイド攻撃で逆襲する場面が増えてくる。星稜はそのまま残り時間もフレッシュな選手を投入しながらしっかり守りきって試合終了。星稜が準決勝に進出した。

京都橘にしても履正社にしても、個人の技術という部分では上回っていながら、その個人技を戦術に落とし込めていない点とチャンスに決めきれない決定力不足が響いた格好になったと言え、短期決戦だからこそ戦術のベースがしっかりしていなければならないというブラジルW杯での教訓を思い起こさせる関西勢の敗退だったように思う。