「香川の滅私奉公システムがドルトムントを救う道」欧州CLグループD ボルシア・ドルトムント-ガラタサライ

リーグ戦では降格圏の17位と絶不調を囲っているドルトムントは、逆にチャンピオンズリーグでは絶好調でこの日もホームで対戦したガラタサライを4-1で一蹴、4連勝を飾って早々にグループリーグ突破を決めてしまった。

ドルトムントが決めた4点の中で香川が絡んだのは1回、それもショートコーナーからのふんわりした香川のクロスをいったん競った後にこぼれ球をパパスタソプロスが押し込んだもので、前半にあったアウトにかけて巻いたシュートも決まらず、強い雨が降っていてトラップも安定せずと、彼自身のプレイもあまりキレがなく後半17分にギュンドアンと交代。その後にドルトムントがカウンターから2点のダメ押しと、一見するとそんなに香川が活躍していなかったようにも見える。

しかし個人的には、香川個人としてはパッとしなかった前半の戦いこそが、ゲーゲンプレス戦術の要であるポスト役として不可欠だったレヴァンドフスキの不在で苦しむドルトムントが今後復活するために、指針となるべき戦い方のヒントを示していたように思う。

ドルトムントのフォーメーションは一応4-2-3-1だが、守備時は4-4-2で香川が前からプレッシャーをかけつつロイスとムヒタリアンがSHの位置で守備をカバー、攻撃時には4-3-3気味にロイス、香川、オーバメヤンがフラットな位置で並び、ムヒタリアンが下り目でリンクマンの役目を果たす。

そうなると当然真ん中に位置する香川が相手マークの標的になるので、香川は後ろに下がったりサイドに行ったりしてマークを引き連れ、そのスペースをロイスやオーバメヤン、ムヒタリアンが交互に入り込んで基点となる。ドルトムントの先制点も、香川が左サイドへ移ったところをロイスがダイアゴナルランで中へ飛び出し、香川に釣られて相手マーカーが間に合わず、そこにピシュチェクからのスルーパス一発を決めたものだ。

つまり、香川が前方プレスでDFラインの裏を取られる危険を防ぎ、香川が動いたスペースを使って他の攻撃陣3人で基点の役割を分散するという、香川の運動量と献身性、戦術眼を利用した滅私奉公システムが成り立っていると言えるわけで、だからこそ香川自身に得点が無くてもチームの中心として信頼され、先発が続いている理由なんじゃないかと思っている。

香川本人としては得点を取ることが最優先ではないタスクを任されることに忸怩たる思いはあるんだろうけど、香川が自分の受けたいタイミングで動いたり裏抜けしたりしてもボールが出て来ない以上、ギュンドアンやシャヒンが万全で復帰するまでは縁の下の力持ちとしてフォア・ザ・チームで頑張るしか無さそうだ。