「これがゾーンディフェンスの最先端?」EURO2016予選 グループE エストニア-イングランド

W杯の疲労が残っているのか、ドイツやオランダ、ベルギー、スイスなどのW杯上位組が軒並み結果を落としているユーロ予選。ブラジルでグループ最下位に終わってしまったイングランドは対照的に3戦全勝となった。

が、エストニアのホームで行われたこの試合は、終始ボールを支配しながらもエストニアの粘り強い組織守備にチャンスを作れず、74分に何とかルーニーの直接FKでゴールを決めて逃げ切る苦しい内容だった。

その中でも驚かされたのはエストニアの守備である。一応フォーメーションとしては4-1-4-1という形のゾーンディフェンスで、イングランドもそれを見据えて前線のルーニーやウェルベック、ララナがバイタルを細かく出入りしてギャップを生み出すゾーン対策の攻撃を見せていたのだが、エストニアの守備はそれをほとんど封じ込めてしまっていた。

何しろ、エストニアはアンカーの選手が細貝もビックリなぐらいに動きまわり、2列目が1人下がって4-2-3-1になったと思ったら次の瞬間にはアンカーがDFラインに入った5-4-1になったり、最終的に1人少なくなってからは5-3-1になるなど、ゾーンの中に入り込んだイングランドの選手に対して忠実なマークで追いかけながらもゾーンに穴を作らないという精緻な流動性、連動性を持った組織を作り上げていたのには驚かされた。

さすがにエストニアは試合序盤に1度決定的なシュートを放った以外はそれほど大きなチャンスは無かったが、やはり欧州の中で中堅~弱小国が競合相手に勝ち点を拾うためには、何より個人も組織も統一された高い守備意識と献身性が求められるわけで、それを当たり前の現実として捉えているエストニアと、攻撃さえ上手く行けば何とかなるかもしれないと浮かれている日本との意識差を痛感させられる試合だった。

そんなわけでイングランドはほとんど良いところ無し。ウェルベックもララナもスペースがあったナンボのタイプなので苦しいのは自明であり、疲労で途中出場になったスターリングの不在が響いたようだ。MOMはやはり決勝点のルーニーで、16分にゴール前への飛び出しにウィルシャーがパスを合わせてボレーを叩いた、この試合最大の決定機も彼のシュートだった。