「ある意味最もJリーグらしい試合なのかもしれない」J1第19節 名古屋グランパス-鹿島アントラーズ

最近のリーグ戦5試合において、負けがない鹿島と勝ちがない名古屋という対照的な成績同士の対戦は、名古屋が2度のリードをこらえ切れず逆転されるという互いの調子の良し悪しが反映された結果になってしまった。

最近の例に倣ってやはり守備面から注目していくと、どちらも守備的にはそれほど組織的な練度は見られない。鹿島の方はブラジル的な緩めの2ラインゾーンを作ってから早めにマンマークへと移行するタイプだが、ブラジル監督にしては組織を重視するトニーニョ・セレーゾ監督らしく、SBが前に出た後のSHのカバーなど、ゾーンのバランスを守る約束事は徹底されている。

が、ゾーン自体はそれほどコンパクトではないので個人が守備でしっかり対処できる事が前提になって来る。名古屋の1点目はサイドに展開されたボールに対して左SBの寄せが遅れてフリーでクロスを出されたものだし、2点目はケネディに対するマークが遅れて後追いの形で小笠原が後ろから倒してしまった。基本が1対1なので1歩対処が遅れるとピンチになりがちだ。

対する名古屋はさらにルーズ。特に前半は酷いもので、25分の同点に追いつかれたシーンでは、右サイドに4人の選手が集まっていながら軽く突破を許してしまい、ゴール前のダヴィには何故か牟田と矢野が2人がかりでマーク、この時点でファーサイドにいる山本が完全フリー、中盤のカバーにはたったの2人しかおらず、鹿島はどうとでも出来るような状態だった。

その場面以外にも、時にはDFが5人になったり中盤が3人のままで誰も寄せに行けなかったり、前線に2人しか居ないのにSBがサイドへのボールに寄せなくてSHが下がってカバーしていたりと、名古屋はとても守備組織が作られているとは言いがたい状態であった。

さしもの西野監督もこれはマズイと思ったのか、後半からは松田を入れてサイドをカバーさせるようにして多少は安定したものの、前半もしょっちゅう守備に穴を空けがちだったレアンドロ・ドミンゲスがやっぱり戻れなくなってしまい、2-2にされた後の90分に左サイドの数的不利を突かれ、名古屋のSB本多がカットインした西に寄せたために遠藤がフリーになり、そこから決められてしまった。SHの位置にいる選手が戻っていれば何とも無かった場面である。

名古屋はスピードスターの永井謙佑がキレキレだったので、ケネディよりもレドミと組ませて2トップにし、守備の出来る選手で後ろを固めたほうが良いと思うんだけど、どうも狙いが中途半端になってレドミが活きていない印象。鹿島はまあそんなに攻撃の内容は良くなかったんだけど、悪いなりに試合を整えられているところは鹿島らしさが戻って来たのかなと。

鳥栖の尹晶煥監督が噂通り退任してしまったが、いくら夏場があって難しい面があるとはいえ、一見派手なルーズ守備同士の試合じゃなくて、かつてのオシム千葉や鳥栖のような戦術にシビアなチームをもっと見てみたいものである。