「もう一つ殻を破って欲しい酒井宏樹」ドイツ・ブンデスリーガ第24節 ハノーファー96-レヴァークーゼン

新加入のライトラルに右SBのポジションを奪われてしまっていた酒井宏樹だったが、バイエルン戦での大敗後に先発復帰、この試合でも上位のレヴァークーゼン相手に先制点を奪われながらも追いついてドローと、監督の起用に応えることが出来た。

ただ、序盤にせっかくPKのチャンスを得ながらフスティの蹴ったコースが甘くてセーブされてしまったし、同点に追いついてからも決定的な場面はいくつかあったのに決められずと、ハノーファーには十分勝てるチャンスがあっただけにもったいなかったなという印象が強い。

それは酒井についても同様で、確かに代表戦から中2日でコンディションが悪かったのかもしれないが、この試合でオーバーラップしたのは後半に1度あったかなというぐらいで、ほとんどは低い位置にいたままでサイドのスペースを埋めていただけ。同じ境遇下の長友がトリノ戦で数えきれない回数の上下動をしていた事を考えると、いくら監督の指示があったとしても寂しい姿勢である。

特に酒井の場合は、左足が使えないのもあってインサイドに入ってのプレイが無く、低い位置でボールを持っても出来ることはサイドの前にいる選手にパスを出すことぐらいなので、攻撃で貢献できる範囲が内田と比べて非常に狭い。相手のプレスが緩いためにサイドの選手が攻撃の基点になる事が求められている現代サッカーにおいては、プレイの高機能化は必然であるといえる。

酒井が持っているポテンシャルについては、前から非常に評価している。この試合でも守備での1対1では無類の強さを発揮し、スタッツでは対人勝率7割をマークしている。CBの代わりにクロスを跳ね返される高さもあるので、守備的なSBとしては今でもかなりのレベルにあると思っている。それだけに、攻撃がレベルアップすれば世界的な選手になれるとの確信がある。

彼の場合はどちらかと言うと技術や身体的な能力よりも、失敗を恐れず自分を信じてチャレンジするメンタルのほうに課題があると思うので、その殻を自ら破ることが出来るかどうかが分岐点になるだろう。