「新しい境地に躊躇なく踏み出す長友」イタリア・セリエA第23節 インテル-サッスオーロ

現在ブービーの順位にいるサッスオーロ相手に、ホームでわずか1点を守り切っての辛勝と、とりあえず2014年になってからの未勝利をかろうじてストップした試合だったが、結果はともかくとして内容的には次のステップにたどり着く可能性は感じられたように思う。

その第1のポイントはミリートの復調。確かに完全な決定機を少なくとも3度フイにはしてしまったのだが、本田がケチャップに例えた通りストライカーが得点を決められるかどうかは水物であり、ベースとなる調子の度合いを図るにはどれだけチャンスまで持って行けているかを見るべきだろう。

少し前のミリートであれば、試合中にボールに絡むことさえ稀だったのだが、サッスオーロ戦ではポストプレイと裏抜けの動きにようやく切れが出始め、ファーストディフェンスの面でも貢献できており、その分パラシオが遊軍的にサイドの飛び出しやチャンスメイクをするという本来の仕事に専念できるようになっていた。

ミリートとパラシオの調子が万全ではないだけに結果にはつながらなかったが、途中の経過はどうあれ第一にインテル本来の形を取り戻すというマッツァーリの姿勢が少しずつ実りつつあるなと感じさせられた。ゴールやアシストの数字こそ出てないものの、チャンスメイクを確実にこなしている小さな東洋人をこれっぽっちも評価出来ずに、短絡的にビッグネームを集めてクロスを上げたら勝てると信じている某赤いチームの監督とは大違いである(笑)。

2つ目はエルナネスの加入。まだ長友を始めとする周りとのコンビネーションが皆無で、強引なプレイやミスが多かったものの、時折見せる両足からの正確なパスはやはりインテルの中盤の中ではものが違うクォリティを見せていて、これからの期待を大いに抱かせるデビューとなった。

そして3つ目は当然ながら長友の進化。最近はミリートとパラシオが2トップで先発する場面が多く、そうなるとウイングの長友が上がるスペースが塞がれることが多くなり、以前のようなシュートシーンは少なくなってしまったのだが、この試合では左に流れて来るパラシオにダイレクトで縦パスを出すという、内田が得意とするような組み立てパスが見られたのは興味深い。

長友の特徴的なところは、ダブルタッチや左足からのクロスなど、あえて自分が今まで得意としてこなかったプレイにどんどんチャレンジしようとするところで、1つ1つのプレイについてはまだミスがあったり精度が足らなかったりするが、そういう対策を相手が立てて来たとしても、その都度新しい手段で乗り越えようとする意欲が他の選手に比べて図抜けているように思う。

エルナネスという信頼に値する相棒が加わって、長友が左サイドでどういう新境地を見せてくれるのかこれからが実に楽しみである。