「イングランドとフランスの違い?」高校選手権 準決勝 富山第一-四日市中央工

今まで見てきた高校選手権の試合は、奇しくもパスサッカーをベースにしたJユーススタイルのチームと、個人勝負を押し出した高体連スタイルのチームとの対戦だったが、富山第一と四日市中央工の準決勝は、ともに高体連スタイル同士のがっぷり四つといった様相の試合になった。

しかしもう少し細かい観点から言うと両者にはやはり明確な違いがあって、富山第一はとにかくボールを奪ったら全員が前へと殺到してパスコースを作り、そこに躊躇なくボールをどんどん走らせていくと言う、言わばイングランド・プレミアリーグのようなスタイル。

そして四日市中央工のほうは、早いタイミングでシンプルにパスを前線に付け、そこから個人がターンやドリブルでゴリゴリ突破していくという、こちらは黒人選手の打開力を中心としたフランスリーグのようなスタイルだと言えよう。

両者の得点も、富山第一の2点目はボールを奪ってから味方が素早く攻撃に切り替え、最終的に5対4の数的優位の中から決めた得点だし、四日市中央工のほうはブッフォンやノイヤーでも取れないゴラッソなFKと、1本のパスでDFラインの裏を取ってから単独でのドリブルシュートと、攻撃スタイルの違いが明確に現れた形だったと言える。

Jユースの場合、ともすればひたすらパスパスでシュートよりもボールを回したいだけだと、と言いたくなるような試合になったりするんだけど、この試合は全くそういう中だるみのような場面が無くて、攻守の切り替えが早くてボールをどんどん送り込もうとする前へのベクトルを感じさせる、欧州の良いところをミックスさせたサッカーで見ていて気持ちが良かった。

Jリーグユースの台頭で高校選手権不要論が時々湧いてきたりする昨今だが、昨年の高円宮杯チャンピオンシップでも流通経済大柏が優勝しているし、高校年代のチームにこういう高体連サッカーがユースと並行に存在できている価値は、ACLの肉弾サッカーに弱いJリーグの現状を見るにつけても、日本サッカーの幅を広げる上で非常に大きいと思うのである。