「これぞ吉武イズム」U-17ワールドカップ グループD 日本-ロシア

2011年のメキシコ大会で旋風を巻き起こし、ベスト8に入る健闘を成し遂げた吉武監督が、日本にしては珍しく今回も継続して指揮を取っている2013年UAE大会。初戦のロシアはヨーロッパチャンピオンで前評判の高いチームだったが、日本は見事に1-0の勝利を挙げての好スタートになった。

吉武サッカーと言えば、0トップの4-3-3でひたすらショートパスをつなぐスタイルなんだけど、それは継続と言うかさらに先鋭化されていて、前回大会ではまだ植田や岩波といったCBらしい体格の選手が出場していたんだけど、今回はCBで180cmを超える選手は1人だけで、あとは全員170cm台前半という、セットプレイ完全無視の足元優先ちびっ子軍団。

そのおかげもあって、このチームはロシアが前方からプレッシャーをかけても全く動じず、DFラインでスパスパとショートパスをつないで前へとボールをつないでしまう。日本のユース世代と言えば、技術はあるんだけど外国人のプレスを浴びるととたんにビビってロングボールを蹴ってしまい、当然フィジカルに劣るのでまたセカンドボールを拾われる悪循環がパターンだったんだが、そういう弱気なプレイはこのチームには存在しない。

そして日本の育成レベルアップの成果だろうが、各選手のボールを受けるボディシェイプとトラップの基本がしっかりしていて、ほぼツータッチでボールを動かしていけるので、ロシアも為す術無く日本にポゼッションを明け渡し、前半は日本のボール保持率が65%という凄まじさだった。

守備面でも1対1での対処は意外としっかりしていて、この試合では後半にロシアが前がかりになってプレッシャーを強くかけて来たが、相手のマークに行ってもあっさり振り切られる事なく粘り強く追いすがり、時にはスライディングも仕掛けるなど、以前のユースならへっぴり腰でパスコースを切るのが関の山だった事を考えれば、世界と比べても見劣りしないスキルになって来た事は心強い。GKの黒人ハーフの白岡君も鋭い反射神経でナイスセーブを連発、無失点に大きく貢献した。

ただ、日本が挙げた得点は瓜生君の無回転スーパーミドルによる1点だけで、ボールを支配していた割りにはチャンスの数は多くなかった。それは、やはりボディコンタクトを避けて当たられる前にパスをつないでしまうために、結局最後の部分でなかなか数的優位が作れないという点にある。

バルサも、メッシにボールが入ってからのドリブルで数人のマークを引きつけ、それで出来たギャップに他の選手が入る事でチャンスになるわけで、先のA代表ベラルーシ戦でもそうだったが、誰かがどこかで1対1を打ち破って行かないとなかなか相手のバランスは崩れて行かない。

その意味では、せっかくボディシェイプ自体はしっかりしているのだから、相手に当たられてもスクリーンでキープし、そこからドリブルやスルーパスといったプレイが出来るようになると、もっと得点力はアップするはずだ。こういう大会は貴重な機会なので、どんどん個人のスキルアップにチャレンジして欲しいところだ。