「短期戦略としてはまずまず、問題は長期戦略」キリンチャレンジカップ 日本-ブルガリア

試合の結果を知ってから録画を見たというせいもあるのか、TwitterのTLや掲示板等での落胆・罵倒ぶりに比べると、そう悪く無い親善試合だったように思った。
まず、ブルガリアは明らかにオーストラリアよりもレベルが上。特に、ディフェンスの高さと強さ、球際の粘りという点は欧州でもかなり上位に入るレベル。実際に、W杯ヨーロッパ予選では首位のイタリアに勝ち点3差の2位につけており、この2年間に行われた10試合で2敗しかしておらず、イタリアには引き分け、オランダにはアウェイで勝っており、そういう相手が真剣に挑んで来たのではそう簡単には勝てないのは当然である。
相手のコンディションは万全では無いだろうが、日本のコンディションもお世辞にも良いとは言えない状況で、失点は不運な面が大きかったし、ある程度ボールを支配できてチャンスを作れていたのだから、オーストラリア戦で選手起用の判断をする上で、選手個々人のコンディションやフィットネスを見たい試合としては、とても良い判断材料になった相手だったと思う。
そして、オーストラリア戦を前にした戦略としても、それなりに3-4-3が使えたと言う事で相手がパワープレイに来た場合の高さ対策に目処が立ったし、オーストラリア側にも日本が3-4-3で来るかどうかの迷いが出て来るはず。特に、乾と香川が両サイドから攻めて来るのはオージーにとってはとても嫌な状態だろう。
ヨルダン戦に負けてしまったのは、アウェイでの環境変化やコンディション面の問題もあっただろうが、引き分け以上で予選突破が決まるという状況で、日本が初戦を6-0で圧勝した相手に負けるはずがないという気の緩みが、口では否定していたとしてもやはりどこかにあったはず。そういう意味では、下手に悪い内容で勝ってしまうよりも、気を引き締め直せて良かったのではないだろうか。
ただし、長期的な戦略、つまりコンフェデからW杯本番に向けてどういうチームを作り上げるかという点で、大きな課題が残ってしまったのも事実。その中でも、相変わらずの問題であり続けているのが、センターラインに重心が無い事。
CL決勝で戦ったバイエルンとドルトムントには、前線のマンジュキッチとレヴァンドフスキ、ボランチのハビ・マルティネスとギュンドアンというように、プレスが激しくかかった中でもボールを収め、キープして相手の勢いを押しとどめる役割を果たせる選手がセンターラインにいる事で、あのハイペースでもミス無くプレイが出来ている。
日本の場合は、現状その役割が出来るのは本田しかいない。ボールを収めて試合を落ち着け、味方が押し上げる時間を作れない状況では3-4-3のサイドは上がれないし、4-2-3-1にしても均等なパス回しだけになってしまって、ゴール前で相手を引き剥がすことが出来ず、シュートを打てるスペースが作れない。
香川や乾、長友、内田らの名だたる欧州組は、そういう重心的存在があって初めて輝ける選手であり、前田や遠藤、長谷部では世界レベルでは到底重心にはなれない状態では、本田がいない時に苦戦するのはある意味当たり前である。可能性があるとすればハーフナー・マイクだが、オランダでの試合や昨日の試合を見てもまだまだ物足りないし、長谷部や細貝もこれからの伸びしろという点では苦しい。
そういう部分を今後ザックがどうやって対策していくかが、コンフェデの時点である程度見えて来ないと、本当に厳しくなるのではないかと思っている。