「それでもベニテスは愛されそうにない」UEFAヨーロッパリーグ決勝 チェルシー-ベンフィカ

オランダ・アムステルダムで行われた、チェルシー対ベンフィカのヨーロッパリーグ決勝は、後半ロスタイムの勝ち越し弾という劇的な決着でチェルシーが勝利。前年のチャンピオンズリーグ王者が、翌年のELを制するというちょっと珍しい記録のオマケ付きの結末となった。
試合前はチェルシー有利の予想が固かったのだが、試合が始まってみると序盤からボールを支配したのはベンフィカ。4-2-3-1の1トップであるカルドーソのキープ力を中心に、2列目のガイタンやサルビオがバイタルエリアでのドリブルでチェルシーのDFを中へ引き寄せ、それで空いたサイドのスペースにSBのアルメイダやメルガレホがオーバーラップしたり、ロドリゴやカルドーソが外へ開くというように、どんどんとスペースを作って数的優位に持ち込む攻撃で圧倒する。
チェルシーはそんなベンフィカのローリング攻撃に為す術なく、ただゾーンというか壁らしく物を作ってひたすらズルズルと後ろに下がるばかり。そして低い位置で何とかボールを奪っても、1トップのトーレスや2列目のマタ、オスカル、ラミレスらが後ろから孤立してしまってボールを受けに行く動きも無いので、結局はベンフィカのDFの早い出足にパスを引っ掛けられてまた攻撃を受けるという繰り返し。
そんなこんなで前半は、数えきれないぐらいにチェルシーのPA内へとベンフィカの選手が入り込む場面があったのだが、前半15分頃の2度の決定機を始めとしてチャンスをものに出来ず、ベンフィカは前半を無得点のままで終えてしまう。
そうなると、当然サッカーの世界ではチャンスを掴めなかったほうが神様の罰を受けてしまうもので、前半の終わり頃からようやく攻撃を繋げられるようになったチェルシーが、後半15分にチェフのロングスローからスルスルと抜けだしてGKと1対1になったトーレスが、いったんはタイミングを失ったかに見えた体制からシュートを流しこみ、押されまくっていたチェルシーが逆に先制点を奪ってしまう。しかしベンフィカも選手を2人投入して攻勢を再び強め、23分にアスピリクエタのPA内でのハンドでPKをゲット、同点に追いつく。
その後は、疲労で中盤に出来たスペースを互いに攻め合うオープンな展開になり、カルドーソやランパードが強烈なシュートを放つものの、それぞれチェフのスーパーセーブやクロスバーに当たるなどで得点にはならず。そして後半ロスタイムのCKで、ファーサイドに流れてヘディングしたイバノビッチのボールが放物線を描いてベンフィカゴール左隅に吸い込まれ、これが決勝点になった。
簡単な相手ではないベンフィカに、過酷な試合スケジュールの中、怪我人を抱えながらもEL優勝という結果、そしてリーグでもCL圏は確保し、UEFAランクでのイングランドの地位を押し上げたベニテス監督はよくやった方ではないかと思うのだが、それでもサポーターからは皮肉で返されているようで少々気の毒である(笑)。まあ、ビッグクラブだと監督には人格面も求められるので、ミドルクラスのチームを戦術的に鍛えるのがベニテスには似合っているんだろうねえ。