「まるで覇気が無かったバルサ」UEFAチャンピオンズリーグ ベスト16第1レグ ACミラン-バルセロナ

リーガエスパニューラでは2位のレアル・マドリーに対して勝ち点12を付けての独走、メッシは歴史上の得点記録を次々に塗り替える絶好調と、チャンピオンズリーグでも隙が無いと見られていたバルサが、何とセリエでは優勝争いから脱落しているミラン相手に1点も取れずに負けるとは、いったい誰が予想したであろうか。
ただ、試合を実際に見てみるとバルサ敗戦の理由はすぐに分かった。とにかく攻撃が遅いのである。バルサと言えば、メッシがボールを持った瞬間に全ての選手にスイッチが入り、メッシのドリブルを相手の守備陣が必死になって止めようと集まった出来たわずかなスペースを切り裂き、対戦相手を絶望の底に叩き落とすゴールを見せるのが恒例なのだが、そのスピードアップへの切り替えが全く見られなかった。
メッシ個人にしても、鋭い突破を見せたのは試合序盤ぐらいで、後半からは流れから完全に消えてしまって最後の時間まで再び輝きを見せる事が無く、チームのバイオリズムがたまたまこのタイミングで下がりきったのでは、としか判断できないぐらいに全てが悪かった。
そういう試合をするチームにはサッカーの女神もそっぽを向いてしまうのか、ミランの先制点はFKがサバタの手に当たったのを審判が見逃した(?)ものであり、バルサの選手が皆手を上げてハンドを主張するセルフジャッジの最中で決められただけに、相当ガックリ来てしまったようだ。2点目も、頭を負傷した影響があったのかプジョルがポジショニングをミスして決められたもので、全ての運周りが悪かった。
もちろん、ミランの守備が素晴らしかったのも事実である。エル・シャーラウィやボアテングといった2列目が攻守の素早い切り替えを怠らず、4-1-4-1のアンカーに入ったアンブロジーニを中心に、バルサの選手がバイタルエリアに入ってもミスやかぶりの無いポジションシフトで決して穴を開けなかった。
そしてイタリア人監督の面目躍如である守備戦術の巧みさ。特に見ていて感心したのは、ただベッタリと引いてしまったり、闇雲にプレスをかけたりという一本調子なやり方ではなく、一旦攻撃を跳ね返しても急いで押し上げず、相手がリフレクションのボールを持って攻撃を作りなおす時になって、初めてしっかり押し上げていた点である。
それにより、カウンターのカウンターでDFラインの裏を取られる事を予防すると同時に、普通であればもう前には来ないな、というタイミングでDFラインにプレスがかかるために、バルサのボール回しが安定せずにリズムが崩れてしまっていた。いや、見事な研究と対策であった。
ただ、この日のバルサは全く参考にならない出来だし、次は言うまでもなくカンプ・ノウでの第2レグである。おそらくミランのやり方は大きく変わらないだろうから、それに対してバルサがどう研究・対策してくるかが楽しみだ。